牛舎の中の牛は搾乳される道具でしかない ”籠の中の鳥は鑑賞される道具でしかない”

 —昔、牛乳絞ってました—

所長のプロフィールにある通り、ちょうど10年前の4月から半年の間北海道北見市の牧場でJA紹介の酪農研修を受けていました。

 

当時の所長は迷子の中の迷子で社会の仕組みもわからず、何をしたいのか、何をすればいいのかも分からない状態で、とにかく状況を変えたくて、実家に居たくなくて、普通に働くのも嫌で、足掻くに足掻いて毎日もがいていました。それで環境もいい北海道へ行こうと思いたち、ただ永住する覚悟はまだなかったので住み込みで働けるなかで一番苦しそうな酪農実習を選びました。当時は海上自衛隊を辞めたばっかりでまだマゾだったんですね…

 

正直、酪農は今までの職歴でも歴代一位のキツさでした。海上自衛隊の通常勤務はもちろん訓練なんて比較にもなりませんでした。海外派遣経験もありましたが、肉体疲労は断然酪農のほうが大変でした。朝は4時から起きて牛舎の糞取り、わら替え、餌やりと続き準備ができたらようやく搾乳をします。搾乳終わったら、餌を足して朝の作業はようやく終了。だいたい朝の9時半くらいです。遅い朝食を取り、食事時間も含め1時間半くらい休んで、昼の餌やりと、夕方からの搾乳準備して、時期によっては牧草の刈り取り、デントコーンの収穫、餌に使う藁のラッピング(藁を発酵させる)、たい肥の処理などもあります。3時過ぎくらいに終わり休憩ある時もあればそのまま16時半から21時位まで夜の搾乳をやる時もありました。遅い夕食、お風呂に入り就寝は22時過ぎです。(22時過ぎ就寝、朝は4時起き)

牧場主さん家族は他にも色々あり、JA行ったり、会合行ったり、新しい子牛が生まれそうなら毎日夜通し生まれるのを待ったりしていました。研修ではそこまでやらないし牛の特徴なども覚えれないので、餌やりや搾乳などの肉体労働でカバーします。牧場主の若旦那様は小生が起きると毎日、リビングで寝落ちしてました。てかむしろ布団で寝てたことがなかったかもしれないです。

 

思い出しながら書いててもキツイ思い出が蘇ります(苦笑)。でも健康になりました。自衛隊で鍛えてた時でも体重が63キロから落ちなかったのが一気に57、8キロまで落ちました。食っててもです(笑)。

 

 

 —所長、毎日牛に足を踏まれる—

牛の搾乳時、まあ、いわばオッパイを触るわけですからデリケートなんでしょう。うまく搾乳器具をつけないと、牛に足を踏まれます。超絶痛いです。踏まれるならいいですけど、膝とか蹴り上げられる時もありました。それは自分の立ち位置の悪さもあるわけでしたが…。

 

足を踏まれてるときは気づきませんでしたが、牛さんにとれば当然ですよね。足踏んで蹴り上げたくなる気持ち。

 

意外かもしれませんし、そこまで気にも留めないからかもしれませんが世の中には乳牛というだけで乳が出ると思っている人もいるようです。牛も人間も哺乳類は赤ちゃんが出来たから乳が出ます。子供の成長期に合わせて絞れる期間が決まっています。産んでから時間が経てば量が減ってきます。牧場主さんは当然、出産時期、毎日の搾乳量、次の種付け時期もしくはいったん放牧で休ませるかなどをいつもどの牛が変化しているか観察しています。乳房炎などもチェックします。乳房炎は小生でも兆候は見ますが、確定かはわからないので牧場主に報告します。

で、牧場主さんは乳が途切れなく搾乳できるように、牛舎に繋がれる牛を、牧場にある労働力で出来るギリギリの範囲で確保できるようにマネージメントしています。労働力の範囲を超えてるとかで奥様と話してるのを見たことがあります。

 

で、冒頭の牛の気持ち。毎日毎日餌貰っても首輪に繋がれたまま(たまに放牧します)、決まった時間に搾乳します。子供をまた産んでまた搾られます。乳牛のオスは肉牛農家に引き取られ、メスは育てられます。乳が出なくなると最後は肉として出荷されるらしいです。小生はその場面を見てませんがやはり牧場主さんは悲しいようです…。

あれ、人間と同じですね。首輪に繋がれて労働力を搾取される。でも少なくとも牛は抵抗するときあります。繋いでる人間(雇い主)の足踏んで、蹴り上げてきます。小生は成牛少し前の牛に突進されました(笑)。放牧してると、電気柵破って逃走します(笑)。飼われていても乳牛にまだ野生の心の角と牙が残っています。

 

でも大半の人間の労働者は…。会社が労働条件を厳しくしようが、ボーナスなかろうが、給料安くなろうが会社の足を踏んづけ蹴り上げる角や牙の残った野生社員はいません。

 

ただ牛と人と違うのは、牧場主さんが愛情をもって自分の牛を飼い、育て最後を見送るときは涙することです。肉牛として引き取る場面はなかったですが、研修中骨折した牛が一頭薬殺処分されました。牧場主さん夫婦は泣いていました…。その日小生は他のすべての作業を引き受け文句も言わず休憩なしでやりました…。

 

でも人間の労働者に対する雇い主の気持ちはどうでしょうか? 労働者が一人辞めても泣きませんよね。一人辞めても変わりはいくらでもいます。たとえ在職中死んでも泣きませんよね。泣くのが愛情と思うわけではありませんが、そんなものです。工場の機械と一緒です。

 

海上自衛隊の船乗りの時、深夜に当直についていた担当のレーダーの付属機器から突然煙が吹き出し、消火までいかないが対処しました。上司連中はいつも乗員は家族だなんだと言いながら、深夜に報告したら、いの一番に聞いてきたことは煙を吹いことによるけが人の有無よりも、レーダーの損傷具合、全能発揮できるかどうかでした。はぁ...。そもそもレーダーが全能発揮できるのは、日ごろのメンテナンス作業と熟練の操作員がいるからで機械単体では動かせないことをわかってない上層部。ハッキリ言って人格も上司としての管理能力も全て失格です。使う側にとって全てが機械と同じなんです。

 

 —社会は大きな牛舎—

牛は足を踏んづけ蹴り上げて、突進してきます。首輪に繋がれていることをわかっているからこそ隙を見せると自由な行動をしてきます。引き取られるときはすごく悲しい声で鳴くそうです。でも大半の労働者は首輪に繋がれているのにも気づいてません。見えない首輪です。会社や色々な世間体。自由に生きてると思っているのは本人だけです。定年後もまだ働きたいし働かせてくれという人もいる。

小生ももちろん鎖で繋がれています。

小生が行った牧場の牧場主さんのような、労働力に対して優しい雇い主、資本家なんてのは存在しません。労働者を社畜なんて、小生も使いますが、正直牛さんのほうがまだ動物としての生きる意志を感じます。隙あれば鎖切って逃げてやる!と。牛はまだ飼われてても畜ではありません。反抗の牙と角を折られた人間は間違いなく畜と言えます。

 

小生はそんなことを考えながら、今お風呂上がりの一杯の牛乳と飲むヨーグルトを噛みしめながら飲んでいます。牛さんありがとう。あの時蹴り上げ、足を踏み突進してきてくれて!!

 

 

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